第39章

田中彦は驚いて声を上げた。「若様、お参りしている間は誰も邪魔しないようにというのが、いつものお決まりですので……」

藤原司は眉をわずかにひそめた。田中彦の言葉で、自分の失態に気づいたのだ。彼は部下を放し、本館へと急ぎ足で向かった。

田中彦は理解できなかった。若様は奥様のことを嫌っているはずなのに、なぜこんなに焦っているのだろう?

本館では、藤原省たちがちょうど出かけようとしていたところに、藤原司が現れた。

彼の目は素早く周囲を探したが、佐藤桜の姿は見当たらなかった。

「佐藤桜はどこだ?」

「お前の嫁がどこに行ったかなんて、俺たちが知るわけないだろ?よくも、そんなことを聞けるもんだ...

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