第50章

桜は藤原家の実家で驚かされてしまい、昼間はずっと元気がなく、夜は早々に部屋に戻って休んだ。

主寝室の前を通り過ぎるとき、彼女は足を止めた。

藤原司はまだ帰ってきていない。

一品苑本館の柔らかな光は、いつもと変わらない。

彼が寝室のドアの前に立つと、ドアに一枚の紙が貼ってあった。そこにはこう書かれていた【若様、冷蔵庫に団子を作っておきました。夜食にどうぞ。本当にありがとうございます!】

字は清らかで美しく、見ていて心地よい。

団子?

それってただの屋台の食べ物じゃないか!

藤原司は紙を剥がし、ゴミ箱に捨てようとしたが、指先が止まり、なぜかベッドサイドの引き出しに入れた。

字は...

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