チャプター 38

家に入った瞬間、何かが違うと分かった。料理の匂いじゃない。シルヴィが遅番でなければ、それはいつものことだ。俺が作るか出前でも頼めばいいから料理する必要はないと伝えたとき、彼女は俺たちのために料理するのが好きなんだと言っていた。いや、変わったのは家の中の空気だった。別に今までが悪かったわけじゃない。だが、明らかに何かが変わっている。少し軽やかで、張り詰めたものがなくなっているような感じだ。そしてその空気は、シルヴィから発せられていた。何が彼女を変えたんだろうと思いながら、声をかけた。彼女の声がする方へ、キッチンへと向かうと、テーブルの上に俺の好物がずらりと並べられているのが見えた。俺の好物を知っ...

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