チャプター 5
グーフ
俺が腰を下ろすより先に、シルヴィが尋ねてきた。「何か飲み物はいる? お茶、水、オレンジジュース、それにソーダが何本かあるけど」「ソーダがいいな、ありがとう」と俺は答えた。「座ってて。すぐ戻るから」シルヴィはそう言って、廊下の奥へと消えた。シルヴィの隣に座って腕を回したい気持ちは山々だったが、まだ俺たちの関係はそこまでいっていない。だから俺は二人掛けのソファに जाकर座った。シルヴィが戻ってきて、俺にソーダの缶を渡すと、向かいの一人掛けソファに腰を下ろした。俺はプルタブを開け、一口飲んでからコーヒーテーブルに置いた。
シルヴィはソファに深く腰掛け、持っているグラスの縁を指でなぞっている。この話は俺から切り出すんじゃない。彼女が始めるべきだ。永遠とも思える時間が過ぎた後、シルヴィがため息をついた。「グーフ、今日、検査に行ってきたって言ったでしょ」と彼女は言った。俺はただ頷き、彼女に続けさせた。「検査は陰性だった。でも、今朝生理が来たから、驚きはしなかったけど」とシルヴィは言った。心の中では飛び上がって喜んでいたが、表情には一切出さない。「大丈夫か?」と俺は尋ねた。彼女がどう感じているか知る必要があった。もし慰めが必要なら、そうしてやりたかった。
「正直、少しがっかりしてる。母親になるのを楽しみにしてたから。でも、現実的なところも分かってる。最初の一回でうまくいく可能性は高くないってことはね」とシルヴィは言った。この女のこういうところが好きだ。挫折を味わっても、前に進むことをやめない。シルヴィはテーブルにグラスを置き、両手を膝の上に乗せてさすった。「それで、今日あなたをここに呼んだ理由なんだけど。まだ私のドナーになってほしいの。もし、あなたがまだその気なら」と彼女は言った。俺は頷いて、そのつもりだと伝えた。「よかった。じゃあ、あなたの条件について。まだあれをやりたい? 私を妊娠させるために、セックスするってやつ」と彼女は尋ねてきた。
「ああ、その条件は変わらない」と俺は答えた。俺たちの赤ん坊は、昔ながらの方法で作りたい。どこかの医者のオフィスなんかじゃなくて。愛から生まれてほしいんだ。そして俺は、この女を愛している。シルヴィは頷いた。「私相手に、ちゃんと勃つかしら? あなたがいつも相手にしてるような女の子とは全然違うし」とシルヴィは言った。もちろん、こいつは俺がいつも抱く女とは違う。俺はわざとシルヴィとは正反対の女を選んでいるんだ。シルヴィの紛い物や、それに近いものなんていらない。俺が欲しいのは本物だ。「手助けが必要なら、雑誌を二、三冊持ってきてもいいし、ポルノでもつけようか?」とシルヴィは言った。
こいつ、本気で言ってるのか? ふざけてんのか? そんなもん、どれもいらねえ。俺に必要なのはシルヴィだけだ。裸のな。考えただけで、硬くなる。俺は手を挙げて彼女の言葉を遮った。「シルヴィ、そんなクソみてえなもんは必要ない。お前が過去に付き合ってきたくだらねえ男たちがどうだったかは知らねえが、信じろ。お前のために俺のモノはちゃんと勃つ。それは問題じゃない」「本当に?」とシルヴィは尋ねた。彼女が自信なさげなのを耳にしたのは、これが初めてだった。体をこすりつけて、どれだけ彼女に欲情しているか見せてやりたい。だが、今はだめだ。すぐに分かることだ。俺は立ち上がって彼女の隣に座ることにした。肩に腕を回し、ぐっと引き寄せる。シルヴィは俺の肩に頭を預け、息を吐いた。彼女の体が俺に預けられ、リラックスしていくのが分かる。彼女が望むなら、いつでもこうしてやれるようになりたい。俺に身を任せて、こんなに心地よさそうにリラックスしてくれるのは気分がいい。
彼女は普段、あまりこういうことができないんじゃないかと感じた。「シルヴィ、お前は美しい女だ。断言できる、俺のモノはお前のためにちゃんと機能する。その時が来たら、見せてやる」と俺は言った。シルヴィは顔を上げて俺を見上げた。心臓が止まるような笑顔を向けて、言った。「ありがとう、グーフ。全部に」。俺は彼女の頭のてっぺんにキスをして、肩をさすった。「礼なんていらない。で、いつ、どこで始める?」と俺は尋ねた。
シルヴィは二週間後に始められると言った。クラブでセックスはしたくないそうだ。それは分かる。今、何が起こっているのか、クラブの連中に知られたくないんだろう。そして俺も、遊びの女たちを抱いてきた場所に彼女を連れて行きたくなかった。俺たちは、彼女のシフトの後か、俺のスケジュールによってはその前に、ここで会うことに同意した。彼女は知らない。俺なら、彼女のためなら一日中だって予定を変えるということを。
会っている時間以外でも、何かあればいつでも電話していいと彼女に念を押しておいた。それに、セックスは一日に一度以上したっていい、と。できることなら、彼女の一番妊娠しやすい時期には、一日中ベッドに縛り付けておきたいくらいだ。二週間待つのは辛いが、その価値はある。シルヴィのために精液を全部とっておくため、オナニーすらするつもりはない。
子作りの話が一段落しても、俺はまだ帰る気にはなれなかった。シルヴィに病院での様子を尋ねると、最近は人手不足を補うために救急救命室に異動になったと教えてくれた。そこはどうかと聞いてみる。
「ええ、全然違うわ、それは確かね。数分おきに新しい患者さんが来る感じ。できる限りの処置をして、送り出すの。自宅に帰すか、もっとケアが必要なら別のフロアにね。それだけよ」とシルヴィは言った。
「それが気に入らないのか?」と俺は尋ねる。
シルヴィは首を横に振った。「ううん。私は自分の患者さんを深く知って、ERで許される以上の手助けをしたいの。家族がそばにいられない時に、支えになってあげたい。たとえ小さなことでも、その人の人生に変化をもたらせているって実感するのが好きなの」
「シルヴィ、あんたが変化をもたらしてるのは知ってるさ。リリーの時にも見た。それに、あんたがどの患者さんにも同じように接してるってことに疑いはないよ」と俺は言った。
「ありがとう。あなたって、その気になればすごく優しいのね」シルヴィはくすくす笑う。
その音がたまらなく好きだ。もっと頻繁に聞かせてくれればいいのに。「それは内緒にしとけ。兄弟たちに俺が優しいなんて思われる必要はない」
シルヴィは声を上げて笑った。「もう、おバカさん。手遅れよ。リタに『痛いの痛いの飛んでけ』のキスをさせられた後、みんな見てたんだから」
一本取られたな。あの子たちには、俺は完全に尻に敷かれている。本人たちもそれを分かっている。兄弟が必要とすればいつでも力になるが、あの子たちのためなら、迷わず命を差し出すだろう。血は繋がっていなくても、俺の姪であり甥なんだ。あの子たちのためにできないことなど何もない。
「じゃあどうしろってんだ? 泣いてたんだぞ。『キスしてくれたら治る』って言われたんだから」
あれは三ヶ月前、リタが転んで肘を擦りむいた時のことだ。大したことはなく、血も出ていなかったが、痛がっていた。タンクがトイレに行っている間に、俺が子猫の絆創膏を貼ってやったんだ。
「あなたは正しいことをしたし、あの子を幸せな気持ちにさせたわ」とシルヴィは言った。
俺たちはしばらく座って話していたが、やがて二人とも腹が減ってきた。一緒にピザを注文する。食後、シルヴィが子供部屋を見せてくれると申し出た。俺たちの赤ん坊が眠る場所を見ておきたかった。
シルヴィに連れられて二階へ上がると、彼女の部屋の隣にある空き部屋に通された。壁には数種類のペンキの見本がテープで貼られている。性別を問わない中間色にするか、赤ん坊の性別が分かってからそれに合わせて塗るか、まだ決めていないのだと彼女は説明した。子犬やアニメのキャラクターのような、性別を問わないテーマに傾いているらしい。ペンキを塗ったら、部屋を赤ちゃん仕様に安全対策して、それから家具を運び入れるつもりだと言った。
シルヴィは俺の意見まで求めてきた。少し考えて、中間色でいくのに賛成だと伝える。シルヴィは床に置いてあった本まで歩み寄り、彼女のお気に入りのテーマを三つ見せてくれた。
「それで、どう思う?」とシルヴィが尋ねる。
俺は数回ページをめくってから、テディベアのテーマに決めた。
「少しアレンジもできるだろ。一体には医者の白衣を着せて、一体にはナース服、一体にはクッテ、それか野球のユニフォームとか。もしやりたいなら、メリゴールドが手伝ってくれるはずだ。彼女の腕前は見たことあるだろ」と俺は言った。
「いいアイディアね。本当に。メリゴールドは手伝ってくれると思う?」とシルヴィが尋ねる。メリゴールドに全てを説明すれば、喜んで引き受けてくれるに違いない。
「喜んで手伝ってくれると思うぜ」と俺は答えた。
「考えてみるわ。実際に妊娠するまでは何もしないつもり。それから彼女に頼むかもしれない。手伝ってくれて、提案もしてくれてありがとう」とシルヴィは言った。
俺は彼女を抱きしめ、どういたしまして、と告げた。彼女を腕の中に収めているだけでは足りない。離したくなかった。
家を出る頃には、これからの数週間が楽しみで仕方がなかった。自分の未来に向かって、また一歩踏み出したのだと分かっていたから、俺の顔には笑みが浮かんでいた。




























































