第10章

山本桜の驚きの声に、山崎川は足を止め、低い声で尋ねた。その表情からは何も読み取れない。

山本桜は気の利いた様子で首を振った。まだ山崎川は林田澄子のところへ行くべきではない。彼女が計画した華々しい登場を台無しにしてはならないのだ。

山崎川と山本桜が手を取り合って入場した瞬間から、二人は会場全体からそっと注目を集めていた。

出席者たちは山崎川がいつもと違って優しく気遣う様子を見て、心の中で評価し、次々と山本桜に取り入るような優しい眼差しを向けた。

挨拶の際も、皆が非常に親しげで丁寧だった。

このことで山本桜は内心で喜びを感じ、まるで自分と山崎奥様の座との距離がもう遠くないかのように思え...

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