第32章

江口琛は林田澄子と秋山美羽を家まで送ることになり、今回は藤原南も止めなかった。

結局、二人の女性は江口琛を見るなり彼にべったりだった。

酔いがひどくても、誰が自分にとって安全な人か分かっているようだ。

藤井海は手伝おうとしたが、江口琛に断られ、腹を立てて立ち去った。

江口琛は林田澄子を抱き上げて車椅子に乗せ、片手で車椅子を押しながら、もう片方の手で秋山美羽を支え、出ようとした。

「ちょっと待って」藤原南が彼らを呼び止め、林田澄子に向かって言った。

「林田さん、しばらく海外へ行くことになるんだ。また会える日を楽しみにしているよ」

林田澄子は、うっとりした目をパチパチさせながら、赤...

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