第9章

秋山美羽が事前にメイクアップアーティストの夏目さんを呼んでいたとは思わなかった。

夏目さんは業界ではそれほど大きな名声を持っていないものの、彼女のファッションセンスは抜群で、鋭い目と繊細な技術を持ち、女性それぞれの個性美を引き出すのが得意だった。秋山美羽は彼女との仕事をとても気に入っていた。

林田澄子は秋山美羽に押し付けられるようにドレッサーに座らされ、メイクアップアーティストが彼女のメイクを始めた。

「素材がいいですね。繊細な顔立ちに、もちもちの美肌、そして涼しげな雰囲気...派手なメイクをすると却って蛇足になってしまいます。ナチュラルなメイクで仕上げて、美羽さんデザインのドレスと合...

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