第10章

春 POV

一週間前。

あのホテルを出た瞬間、私は後悔した。

部屋に駆け戻って、青村という女性に「改めて自己紹介させてください。初めまして、春です。今夜、一緒に夕食をご馳走してもよろしいでしょうか?」と言いたかった。

でも、そうしなかった。

学院長が私のために用意してくれた送別会に急いでいたからだ。

そして一日中、自分に言い聞かせ続けた。

ワンナイトには決まりがある。お互いの体は繋がっても、それぞれの生活には決して干渉しない。セックスが終われば、二人はこの世界で最も遠い他人同士になる。彼女はただのワンナイトの相手であり、私の人生に名前を残すほどの存在ではない。

だが、自分を騙...

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