第31章

藤原春 POV

隆がサラからの電話を受けた時、私は彼と一緒に射撃場から出てきたところだった。週に一度の射撃練習は、大学時代から続けている習慣だ。

隆は緊張した表情で私を一瞥してから電話に出た。彼女の声が電話から聞こえ、春を探していると言った瞬間、私は即座に電話を奪い取った。

彼女はきっと何か困難や辛いこと、あるいは危険な状況に直面しているのだろう。一瞬で鼓動が早まった。

だが彼女は単に、特別に嬉しいことがあって私に伝えたかっただけだった。彼女は自分の最も個人的な感情を私と分かち合いたかったのだ。

石のように固かった私の心が、一瞬で溶けていくような感覚があった。

彼女の言葉は短く、...

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