第70章

藤原春 POV

誘拐犯が指定した待ち合わせ場所は、ボゴタ郊外だった。車を降りて、あたりを見回す。そこは廃道沿いにある駐車場だが、一台の車もなく、周囲はがらんとしていて見晴らしがいい。取引にはうってつけの場所だ。

ダニエルと彼の部下たちは、場所が判明するやいなや出発した。正直なところ、彼らがどこに隠れているのか見当もつかない。一番近い建物でさえ、ここから五百メートルは離れており、完全に拳銃の射程外だ。

耳に隠したインカムイヤホンを押してみたが、何の応答もない。

十二時を過ぎ、俺は少し焦り始めていた。日差しが強く、額にはすでに汗が滲んでいる。

突然、公道に一台の車が猛スピードで現れ、す...

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