第77章

サラPOV

その日、救急外来に特殊な心臓発作を起こした患者が一人、運び込まれた。

救急車に同乗していた医師の話では、患者は胸の痛みで倒れ込み、呼吸困難に陥ったとのことだったが、救急外来に入る頃には、徐々に回復していた。

救急部長の木村直樹が自ら入院手続きを行い、この患者にはより長時間の心拍数モニタリングと、包括的な心臓検査が必要だと特記していた。

私が眉をひそめながら、その極めて簡素で奇妙なカルテを手に病室へ入ると、ベッドの上の人物が私に向かってにこやかな笑顔を見せた。「サラ、久しぶりだな」

「アトリ!あ、あなたが心臓発作の患者なの?」私は再び手元のカルテに目を落とす。名前は、「マ...

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