第78章

藤原朝 POV

その晩、森川誠は夜勤の予定で、私は彼を驚かせようと病院の当直室へ向かった。

心臓病棟一区の廊下は静まり返っていた。当直室の窓から微かな光が漏れているのが見えたので、そっとドアを押して中に入る。

部屋の中では、誠のデスクの上にあるスタンドライトだけが灯っていた。そして、白衣を着た彼が隅の方に立ち、傍らの低い棚で何かを探しているようだった。

私はにやりと笑い、音を立てずに彼の背後へ忍び寄ると、不意にその腰へと抱きついた。

「誠、来たよ」

抱きしめられた身体がびくりと震え、振り返る。その瞬間、目の前にあるのが全く見知らぬ顔であることに気づいた。

私はすぐに両腕を放し、...

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