第85章

藤原サラ POV

夜、カーテンを閉め、灯りを消そうとしたその時、不意にコテージのドアが控えめにノックされた。

ドアの前に立っていたのは春だった。私は力任せにドアを閉めようとしたが、彼の強い力で押し留められてしまう。ついに諦めると、彼は無言で中に入り、ドアを閉めた。

私は春に背を向けたまま一言も発さず、キッチンへ向かい、自分にウィスキーを一杯注いだ。

「サラ、話がしたい」

また『話がしたい』か、と私は心の中で嘲笑った。

「この前の話し合いは、とても気まずいものだった。念のため言っておくけど」

「すまない。あの時は酷く気分が滅入っていたんだ。アトリが、君がダニエルを連れてきた、ダニ...

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