第86章

藤原春 POV

ジョーダン・マーフィー。ロサンゼルス市で最も有名な心理療法士だ。俺の周りの人間は皆彼を知っており、俺のセラピストだと思っている。富裕層の間では、専属のセラピストを持つことは生活必需品なのだ。

だが、誰も知らない。彼が俺のセラピストではなく、中学の同級生だということを。

俺たちはかつて親友で、アメフト部のチームメイトだった。大学で別々の街へ進学してからも、連絡が途絶えたことは一度もない。

エミリがコロンビアから帰国した後、彼女の精神状態はひどく悪化していた。ジュリーは彼女をひどく心配し、その心配は父の機嫌にまで影響を及ぼした。

そこで俺は、ジョーダン・マーフィーをエミ...

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