第87章

藤原サラ POV

朝食を済ませた後、私はエミリと一緒にリゾートの遊歩道を散歩していた。山には白い霧が立ち込め、陽の光を浴びてゆっくりと昇っていく。遠くの街並みが、霧の中から徐々にその姿を現し始めていた。

「本当に綺麗ね、ここ」エミリは芝生の方を向いて、深く息を吸い込んだ。

「ええ、本当に」山から風が吹きつけてきたので、私は手にしていたショールをエミリの肩にかけてあげた。

「サラ、私、良くなると思う?」

「もちろんよ。そんなに重い病気じゃないんだから。PTSDなんて、たくさんの人が経験するものよ」

「でもあなたは違う。あなただってコロンビアで誘拐されたのに」

私の心臓がどきりと跳...

ログインして続きを読む