第89章

藤原サラ POV

いわゆる子供部屋に足を踏み入れると、そこには人が住んでいる形跡がまったくなかった。泣き声の出どころを探し当てると、それはなんとスピーカーだった。

途端に緊張が走り、全身に鳥肌が立つ。まずい、騙された。

すぐさま踵を返し、この場を立ち去ろうとしたが、振り返ったその刹那、後頭部を強く殴打された。

力なくバスルームの床に崩れ落ちる。激しい目眩がして、目の前が真っ白になった。

ようやく、かろうじて視力が回復すると、目の前には金属バットを手にしたエミリがいた。

「エミリ、どうして?」

ほとんど頭を支えることもできず、ひどく弱々しい声で尋ねる。

バスルームのドアの外へ這...

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