第97章

サラ POV

その日の夜、私は森川さんと、とある高級レストランで食事をする約束をしていた。

私はこの日のために、ノースリーブで胸元が深くV字に開いた浅緑色のドレスに着替えた。

鏡の前で髪を結い上げていると、首元が何だか物足りない気がした。

ふと、以前病院の社長室で春と口論になった時のことを思い出した。あの時の私はどれほど悲しく、苦しかったことか。もう二度と彼と一緒にはいられないと思い込み、腹立ちまぎれに、彼がくれた愛の証であるネックレスを突き返してしまったのだ。

私はふっと笑い、鏡の中の自分に語りかけた。「サラ、本当に短絡的だったわね。でも、恋を前にして、冷静でいられる人なんていな...

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