第119話ヘンリーのせき血

イーサン視点

幸いにも、地下室や通路に火の手は回っておらず、屋敷の反対側の一部が燃えているだけだった。これは俺たちをルーカスの救出に向かわせるための、テオの計略なのだろう。罠かもしれない。

トンネルの扉が、錆びついた金属の軋む音を立てて開いた。ルークと俺は即座に銃を構え、何が待ち受けていようとも対応できるよう身構える。入り口をくぐる際、引き金にかけた俺の指には自然と力がこもっていた。

目の前に広がっていたのは、あまりに非現実的な光景だった。この地下の戦場では、立場が完全に逆転していたのだ。かつてニューヨークで最も危険な男と呼ばれたテオ・ゲレロが椅子に縛り付けられ、その息子であるルーカスが...

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