第76話楽しい会話

ライラ視点

イーサンが夜の街を車で駆け抜ける中、窓の外では街の灯りが滲んで流れていく。闇に浮かび上がる彼の横顔は鋭く、美しい。私の肌の下では怒りがくすぶっているというのに、先ほど彼に触れられた場所がまだ疼いていた。そのとき、私たちの間の張り詰めた沈黙を破るように、彼の携帯電話が鳴った。

「ああ、もう着いてる。車で待つよ」

低く、抑制の効いた声で彼は答えた。

私は驚いて彼の方を見た。電話の相手はセバスチャンだったが、どこか様子が違っていた。なんだか穏やかなのだ。イーサンの兄特有の、あの嘲るような傲慢さは消え失せ、まるで……人間らしい響きだった。

「ライラも連れて行く。少し懲らしめてやら...

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