第94話後ろで女性が笑っているのが聞こえた

ライラ視点

朝の日差しがキッチンの窓から差し込み、大理石のカウンターに温かな光の斑模様を描いていた。そこではルーシーが、どうしても自分で作ると言い張ったパンケーキの上に、新鮮なベリーを飾り付けている。甘い香りがセーフハウスを満たし、家とは呼べないこの場所特有の無機質な匂いを、ほんの一瞬だけ覆い隠してくれた。

「これ、最高においしい」口いっぱいに頬張ったふわふわのパンケーキと、たっぷりかかったメープルシロップの味に、私は思わず声を漏らした。妊娠八ヶ月ともなると食欲は底なしで、ルーシーは事あるごとに私に何かを食べさせようとしてくれる。

「秘訣はね、生地に少しだけバニラを加えることよ」ルーシー...

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