第12章 モブキャラがヒロインに昇格

もうすぐ、あの日から一年が経とうとしていた。

「なあ、すみれ。そろそろ俺に、正式な彼氏っていう肩書きをくれないか?」

私のアパートで、手際よくコンビニの制服を畳みながら、斉藤くんが不意にそんなことを口にした。

カタカタとキーボードを叩いていた私の指が、ぴたりと止まる。

「どうしたの、急に」

くるりと椅子ごと振り返ると、斉藤くんが珍しくむくれた顔で唇を尖らせていた。

「母さんに、取引先の社長の娘さんとのお見合いをセッティングされたんだ。これで三回目」

彼はやれやれとため息をつく。

「このままだと、ゴールデンウィークも実家に帰りたくない……」

その情けない様子に、思...

ログインして続きを読む