第4章 深夜の逃亡

斉藤さんのくれた袋を抱え、彼を校門まで見送った。

不意に、斉藤さんのスマートフォンが鳴る。電話に出た途端、彼の表情がこわばった。相手はお母さんだろうか。

「わかった、今すぐ帰る」

電話を切ると、彼は私に向き直った。

「親に呼び出された」

だが、彼はすぐには立ち去らず、ふいに手を伸ばして私の額をこつんと軽くつついた。

「ゴールデンウィーク、餓死するなよ」

半ば冗談めかした口調で言う。

「大丈夫。何かあったら、斉藤くんの数学ノートを捨てるから」

私も真面目な顔を作って脅し返した。

去り際に彼は一度だけ振り返り、電話をかけるジェスチャーをした。その時、彼の制服の胸...

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