第4章 深夜の逃亡
斉藤さんのくれた袋を抱え、彼を校門まで見送った。
不意に、斉藤さんのスマートフォンが鳴る。電話に出た途端、彼の表情がこわばった。相手はお母さんだろうか。
「わかった、今すぐ帰る」
電話を切ると、彼は私に向き直った。
「親に呼び出された」
だが、彼はすぐには立ち去らず、ふいに手を伸ばして私の額をこつんと軽くつついた。
「ゴールデンウィーク、餓死するなよ」
半ば冗談めかした口調で言う。
「大丈夫。何かあったら、斉藤くんの数学ノートを捨てるから」
私も真面目な顔を作って脅し返した。
去り際に彼は一度だけ振り返り、電話をかけるジェスチャーをした。その時、彼の制服の胸...
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チャプター
1. 第1章 誤って送られた弁当
2. 第2章 ごめんなさい、この三ヶ月弁当は全部私が食べました
3. 第3章 意外なランチと気遣い
4. 第4章 深夜の逃亡

5. 第5章 意外な避難所

6. 第6章 若様と野良猫

7. 第7章 勇気と警告

8. 第8章 真実と勇気

9. 第9章 父の懇願

10. 第10章 父の去り

11. 第11章 東京での再会

12. 第12章 モブキャラがヒロインに昇格


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