第5章 意外な避難所

斉藤さんにぐいと手首を掴まれた。その眼差しには、どこか咎めるような色が滲んでいる。

「なんで連絡くれなかったんだ」

彼に掴まれた自分の手首を見下ろす。そこから伝わる確かな温もりが、冷たい夜風と鮮やかな対比を成していた。

「私……スマホ、持ってないから」

私は消え入りそうな声で白状した。

斉藤さんの表情が、責めるものから合点がいったというものに変わる。彼は私の手首をそっと離すと、軽く頭をぽんぽんと叩いた。

「なるほどな。スマホもいじらない真面目な優等生ってわけか」

そして、探るように尋ねてくる。

「腹、減ってる?」

こくりと頷くと、堪えていた涙がまた一筋、頬を伝っ...

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