第8章 真実と勇気

斉藤さんの拳が宙で一瞬静止し、次の瞬間、凄まじい勢いで振り下ろされた。

ゴッという鈍い音と共に、松本雨の頭が背後の自動販売機に叩きつけられる。彼の口の端から、つう、と一筋の血が流れた。だが、その顔には歪んだ笑みが貼り付いている。

『やった! 暴力事件発生!』

『これで少年院行き確定www』

弾幕が目の前を嵐のように駆け巡り、私の心臓は張り裂けそうだった。

「先週、俺がクラスの女子をいじめてた時、お前が止めに入ったよな?」

松本は口元の血を乱暴に拭い、挑発的な眼差しを斉藤さんに向ける。

「俺が告白されて断ったら襲われた、って噂を流してやったんだ。お前を『告白に失敗して女に...

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