第9章 父の懇願

新学期まで、あと一ヶ月を切っていた。私の毎日は、アルバイトと受験勉強の残務整理だけで埋め尽くされている。

金曜の夜、コンビニの客足はまばらだった。

私がバックヤードで届いたばかりのドリンクを補充していると、不意に表からがなり立てるような声が響いてきて、思考がぴたりと止まった。

「栗山すみれはどこだ! ここでバイトしてるんだろ!」

聞き覚えのある、聞きたくない声に、全身が氷のように強張る。

「栗山すみれ! いるのはわかってんだ! 出てこい!」

すぐに店長の制止する声が響いた。

「お客様、どうかお静かにお願いします! 他のお客様のご迷惑になりますので!」

父だった。

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