第9章 父の懇願
新学期まで、あと一ヶ月を切っていた。私の毎日は、アルバイトと受験勉強の残務整理だけで埋め尽くされている。
金曜の夜、コンビニの客足はまばらだった。
私がバックヤードで届いたばかりのドリンクを補充していると、不意に表からがなり立てるような声が響いてきて、思考がぴたりと止まった。
「栗山すみれはどこだ! ここでバイトしてるんだろ!」
聞き覚えのある、聞きたくない声に、全身が氷のように強張る。
「栗山すみれ! いるのはわかってんだ! 出てこい!」
すぐに店長の制止する声が響いた。
「お客様、どうかお静かにお願いします! 他のお客様のご迷惑になりますので!」
父だった。
...
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チャプター
1. 第1章 誤って送られた弁当
2. 第2章 ごめんなさい、この三ヶ月弁当は全部私が食べました
3. 第3章 意外なランチと気遣い
4. 第4章 深夜の逃亡

5. 第5章 意外な避難所

6. 第6章 若様と野良猫

7. 第7章 勇気と警告

8. 第8章 真実と勇気

9. 第9章 父の懇願

10. 第10章 父の去り

11. 第11章 東京での再会

12. 第12章 モブキャラがヒロインに昇格


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