第5章
三十分ほどして、和也が戻ってきた。
彼の白いTシャツは、生々しい血でぐっしょりと濡れていた。一歩進むたび、握りしめられた拳から新たな血の滴が床に落ちる。
「うそっ!」私はソファから飛び起きた。「怪我してるの?」
彼はそれを手で制し、ソファにどさりと腰を下ろした。電子タバコを取り出し、深く長く煙を吸い込む。
「俺のじゃねえよ、奴らが俺を藤原様と呼んでたの、聞こえなかったか?」
私は恐る恐る、真一たちのことを訊ねた。
「肋骨が数本折れただけだ。死にはしねえよ」和也は肩をすくめた。「死んだのかって聞くなんて、お前、なかなか肝が据わってるな」
うつむくと、こらえていた大粒の涙...
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