第8章

「お父さんは、ただ心臓発作を起こしたわけじゃない」

藤井景は石のように固まった。

「心停止だった。医師もそう診断している」

「高橋有希さんから薬のことを聞いたわ。あなたが買った薬のこと」

彼の表情が変わった。思いやりに満ちた仮面、温かい微笑み、優しい気遣い――その全てが溶け落ち、冷たく鋭い何かが剥き出しになった。

「高橋有希は何も知らねえ」

「彼女は領収書を持っている。クレジットカードの記録も。あなたがもみ消した毒物検査報告書も」

私は心臓が激しく鼓動していたが、声だけは平静を保った。

「彼女は、あなたが父を殺したことを知っているのよ」

「あのクソ女め」

彼の声は...

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