チャプター 275

カイラン

カッと血が上った。よくも……!

「俺はお前たちの皇太子だぞ」鋭い声で念を押す。「どけ」

二人は素早く視線を交わした。衛兵の一人が目を伏せ、わずかに頭を下げる。「申し訳ありません、殿下」彼はおずおずと口を開いた。「ですが、陛下がご命令を――」

「さっさと失せろ」冷たく言い放ち、彼の言葉を遮る。「誰かを引き裂きたくてうずうずしているところなんだ。お前から始める気にさせるな」

奴らの怯えた顔を見るまでもなく、二人を突き飛ばし、天幕の中へと押し入った。

中に入ると、王はすでにくすくすと笑っていた。全て聞こえていたのだろう。全てを聞き通す……彼にとっては、今に始まったことではない。

天幕の...

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