第8章

午前十時。国立刑務所、面会室。ガラスの仕切りに、緊張した私の顔が映っていた。向かいに座る大和は灰色の囚人服を身にまとっている。その瞳には、今まで見たこともないような不思議な安らぎが宿っていた。

「瑞希」彼は穏やかに言った。「俺は二十八年間、お前を憎んできた。俺がなれなかったものの全てだったからだ。刑務所のセラピーで教わったんだ。あれは愛じゃなかった――ただの所有欲だったってな」

その声に含まれた正直さに、私は衝撃を受けた。初めて、兄が人間らしく聞こえた。

「ここの心理学者は、俺が反社会性パーソナリティ障害だって言ってる。愛を武器として利用してきたんだ」彼は手書きのリストをテーブルの...

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