絶対に壊さない

ネイサン

わざわざ丁寧なノックはしなかった。ケインの命令だ。アメリアのヒートが終わるまで、ルザンヌは俺と一緒に住むことになった。アルファの言葉は絶対で、議論の余地はない。廊下でぐずぐずしている時間が長引くほど、彼女がこの件で思い悩む時間が増えるだけだ。さっさと済ませてしまうに限る。

ドアを押し開けると、軋む音がした。ルザンヌはもうベッドに腰掛けていた。背筋を伸ばし、足元のサッチェルバッグの上で両手を組んでいる。俺が入った瞬間、彼女の視線が突き刺さってきた。冷たく、揺るぎない眼差し。だが、その肩がこわばっているのは見逃さなかった。

「もう荷造りしたのか」俺はバッグを指して言った。

彼女の指がス...

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