第30章

金曜日の午後、栄光株式会社は早めに休みとなり、四台の大型観光バスが栄光ビルの前に停車していた。栄光株式会社の社員たちは次々とバスに乗り込んでいった。

バスの中に座っていた水原恵子は、外を見つめ続けていた。会社の上層部はほとんど揃っていたが、佐藤和也の姿だけが見えなかった。

「結局来るのかしら?」隣の伊藤美咲が少し我慢できなくなった様子で尋ねた。

「私にもわからないわ」水原恵子は眉をひそめて答えた。

「もう無理じゃない?あと五分で出発よ。私のお金が…」伊藤美咲は意気消沈して顔を覆った。

「まあいいじゃない、最悪今月のランチ全部私がおごるわよ」水原恵子は心の中で思った。どうせ毎日昼に望...

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