第6章

 窓際の隅の席に、私は座っている。向かいにいるのは西野智也。これで彼との英語の補習は十四回目になる。

 彼だけが、今まで私に何の説明も求めてこなかった。思ったよりも手強い相手だ。

「葵先輩、この構文の解釈、合ってますか」西

 野が眼鏡を押し上げ、人懐っこい笑みを口元に浮かべる。

 私は頷き、上の空で彼のノートをチェックした。

 補習期間はもうすぐ終わるというのに、私と西野智也の関係は、表面的な先輩と後輩のやり取りに留まったままだ。

 彼は神崎菊司や池田悠よりも攻略が難しい。一見すると明るい天才少年だが、夏祭りの後からずっと、礼儀正しくもよそよそしい距離を保っている。

「先輩、ぼ...

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