第13章 気が狂ったのか

初出勤の一日、藤咲花音はほとんどの時間を業務の把握に費やし、比較的穏やかに過ごすことができた。

夕方、桐島翔太は早々に彼女を迎えに来ていた。

鈴木舞と一緒にビルから出てきた藤咲花音は、路肩に停まる車を見て、鈴木舞から冷やかすような色っぽい視線を投げかけられた。

藤咲花音は彼女に微笑み返し、足早に車へと乗り込む。

ビルの出入り口をじっと見張っていた桐島翔太は、藤咲花音の周囲に不審な男がいないことを確認し、ようやく安堵の表情を見せた。

「花音……」

彼は振り返り、今朝拒まれたキスを求めようとする。

藤咲花音の涼やかな声がそれを遮った。

「これからは、手前の角で待っていて。会社の人...

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