第37章 彼女に代わって辞職

神崎彩はようやく口を開いた。

「あの火事でも死ななかったのよ。どうってことないわ」

声には、一片の温度も感じられなかった。

西園寺蓮は言葉に詰まった。

自宅の惨状は、彼も目にしてきた。彼女の部屋は無残に焼け爛れ、家財道具はほぼ灰燼に帰し、四方の壁だけが黒く焦げ残っていた。

その光景を思い出し、背筋が凍るような恐怖を覚えた彼は、眉を寄せて叱責した。

「お前、なんで火なんかつけたんだ? まさか自分も……」

焼け死ぬつもりだったのか?

最後の一言は、どうしても口に出せなかった。

実際、死が怖くないはずがない。

だが彼女にとっては、彼に飼い殺しにされるよりは、炎に焼かれて死ぬ方が...

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