第64章 彼は本当に神崎彩狙いなのか?

狂乱した叫び声が、神崎彩を現実に引き戻した。

彼女にとって、二度ならず三度までも自分を救ってくれたあの男は、清廉潔白であり、神聖にして不可侵の存在だった。

この薄汚い騒動に、彼を巻き込むわけにはいかない。

彩は九条莉奈に冷ややかな視線を向けると、一言も発することなく、怪我をした方の手を掲げ、手首に巻かれたスカーフを引きちぎった。

元が赤いスカーフだったため、血の色は目立たなかった。

だがスカーフが取り払われた瞬間、手首に何重にも巻かれた分厚いガーゼが衆目に晒された。

ただ、そのガーゼはもはや白くはなかった。

鮮血に染まり、どす黒い赤色に変色しており、見るも無惨な状態だった。

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