第093章 放してほしいんだろ

神崎彩は、潮騒の音に意識を呼び覚まされた。

目を開けると、そこはやはり旧別荘の財務室だった。

手足は拘束され、口もガムテープで塞がれている。

ただ手足を縛られ、口を封じられているというだけだ。

波の音は、開け放たれた窓の外から聞こえてくるものだった。

彼女は意識を失う前のことを、記憶の底から手繰り寄せた。あの時、部屋には彼女と中越浩しかいなかった。

中越浩に鈍器のようなもので殴られたのだ。

その後のことは分からない。

今が何時なのかも不明だが、窓から射し込む陽光の角度から推測するに、午後一時を回ったあたりだろうか。

今頃、水瀬遥人はすでに事態を知っているはずだ。

彼は必ず...

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