第6章

翌朝八時半、私は疲弊しきった体を引きずって市川さんのスタジオへと向かった。一睡もできなかったせいで目は赤く腫れあがり、心は死んだ灰のようだった。

市川さんはすでに私を待っていた。その顔は暗く、いつもの温かい眼差しは完全に消え失せている。

「座りなさい、葵君」その声は氷のように冷たかった。

私は震えながら腰を下ろした。まるで裁きを待つ罪人のような気分だった。

「昨日、国立音楽高校に連絡した」市川さんは単刀直入に切り出した。「鳴瀬葵という名前の学生は在籍したことがない、と」

心臓が止まった。

「業界の友人にも何人か当たってみた」市川さんは続けた。「誰も君のことを知らない。君の...

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