第253話誕生日の願い

ジェイド視点

トロサを殺した、あの特徴的なほくろのある影の工作員と対決して二日が過ぎた。市場の路地裏で彼を始末したところで、チョコレートバーを握りしめていたトロサの小さな体の光景が完全に消え去るわけではなかったけれど、彼の仇が代償を支払ったと知ることで、胸の重荷は少しだけ和らいだ。命には命を――最も原始的な形の正義だ。

「髪、洗わないと」

新しい隠れ家に着くと、私はひびの入った洗面台のある小さなバスルームに目をやりながら呟いた。

イーサンが私の視線を追う。「その肩の傷で屈んだらダメだ。また出血が始まる」

「平気よ」

「ダメだ」彼の口調に、反論の余地はなかった。「ベッドに横になれ。俺が...

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