第10章 農家の中庭

山はさほど高くはないが、道は確かに歩きにくい。三十分ほど歩いただけで、橘詩音はすでに息を切らし、橘陸も似たようなものだった。

橘詩音は表情を取り繕い、健気な顔をしながら、橘陸を慰めつつ、罪悪感を滲ませた。

「お兄ちゃん、ごめんなさい。私のせいで、足手まといになっちゃった」

橘詩音は軽く息を弾ませながら言った。橘陸に言ったつもりの言葉だったが、わざと大きな声で発された。

「何を言ってるんだ。お前は俺の妹だろ。足手まといだなんて思うわけない。俺こそ、お前に辛い思いをさせてすまない」

橘陸は痛ましげな眼差しで橘詩音を見つめた。立ち止まって休みたかったが、自分から言い出すのは気が引けたため、...

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