第36章 元カレ

斎藤徹はため息をつき、「のぞみ、俺たち、真剣に話し合う必要があると思う」と言った。

部屋に籠って聞き耳を立てていた桐谷紫帆は、この男二人がまったくもって意味不明だと感じていた。昼間は青山希に敵意むき出しだったくせに、夜になるとこっそり彼女を訪ねてくるなんて。

まったく理解しがたい、名家の愛憎劇だ。

青山希は白目をむいた。「私たちに話すことなんて何もないわ。円満に別れて、それで終わりよ」

「青山希」斎藤徹が不意に声を潜めた。

「君の部屋にいる人はまだ寝ていないはずだ。もし俺と話すのを断るなら、俺たちの関係をここでばらす」

青山希は彼を見て冷笑した。「言いたければ言えば? あ...

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