第49章 苦しい

橘陸の心は、ますます穏やかではいられなくなった。

草薙隼人という男の振る舞いは実に不愉快だが、彼がたった今放った言葉は、確かに橘陸の心に突き刺さっていた。

橘陸は思わず、この二日間の橘詩音の行動を吟味し始め、彼女と青山希を比較せずにはいられなかった。

橘詩音は今朝、どうしてあんなふうに行ってしまったのだろう? 一杯のお湯すら残さずに。

彼女はこのバラエティ番組に夢中になりすぎているのか、それとも忙しすぎたのか? あるいは、ここ数日のスケジュールで橘詩音は疲れ果ててしまったのだろうか。まさか、兄である自分の気持ちなど、本当に気にかけていないとでもいうのか?

思えば昔、自分が...

ログインして続きを読む