第100章

「すまいる不動産の専務?私に何かご用でしょうか」

小林結愛は一瞬躊躇してから、そう尋ねた。

「小林様、本日、弊社のモデルルームをご覧になっていませんでしたか」と金田浩二は愛想笑いを浮かべて訊ねた。

その言葉を聞いて、小林結愛はようやく合点がいった。今日モデルルームを見学した件で、家の感想やいつ購入するのかといったことを聞きたいのだろう。

小林結愛はこの数日間、J市中のモデルルームを巡っており、こうした電話には慣れていた。

しかし、今のように専務自ら電話をかけてきたのは、初めてのことだった。

「ええ、確かに今日そちらの物件を拝見しました。素敵なヴィラばかりでしたけど、今は手持ちの現...

ログインして続きを読む