第48章

渡辺美咲は深呼吸をして、すぐに決心を固めた。

弓場風太郎に向かって小声で言った。「弓場さん、本当にこの別荘を私にくださるんですか?」

「ああ」

弓場風太郎はあっさりと頷いた。

渡辺美咲は弓場風太郎の返事を確認すると、特に考え込むこともなく、テーブルの上の契約書を手に取り、素早く自分の名前を書き入れた。

周囲の人々が渡辺美咲が本当に契約書にサインするのを見て、顔に羨望の表情を浮かべた。

彼らからすれば、今の渡辺美咲は宝くじの大当たりを引いたも同然だったからだ。

そしてこの時、村上薫は後悔で胸がいっぱいだった。自分の打算的な態度さえなければ、今契約書にサインしていたのは自己のは...

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