第68章

今、弓場風太郎がミナを引き止めた目的は、至って単純なものだった。

それは、もしミナが自分の傍で何かトラブルに巻き込まれた場合、すぐに下村強太の部下を呼べるからだ。

しかし、ミナが山崎風太と病院へ向かう道中で危険な目に遭ったとしたら、弓場風太郎には知る由もなく、すぐさま彼女を助けに行くこともできない。

もちろんミナは、弓場風太郎のそんな心中を知るはずもなかった。先ほど山崎風太が殴られるのを目の当たりにしながら、一言も発さなかった弓場風太郎の姿に、彼女はすでに強い怒りを覚えていた。

そして今、山崎風太を病院へ連れて行こうとしているのに、弓場風太郎がまたもやそれを遮る。ミナは、この弓場風太...

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