第79章

小林結愛は、去りゆく弓場風太郎の後ろ姿を見つめ、その顔にどこか奇妙な表情を浮かべた。

というのも、たった今、弓場風太郎が振り返ったその瞬間のことだ。

小林結愛は、弓場風太郎が自分に冗談を言っているようには思えなくなったのだ。

「弓場風太郎、ちょっと待って!」

一瞬ためらった後、小林結愛は不意に声を張り上げた。

「まだ何か用かな?」

弓場風太郎は振り返り、小林結愛に視線を向けて静かに尋ねた。

「あなたの銀行口座番号、教えてくれる?この間、真子に生活費を渡しに行かせたけど、受け取ってくれなかったでしょ。直接振り込むわ」と、小林結愛は小声で言った。

「ああ、口座番号なら後でLINE...

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