第86章

金田専務の言葉を聞き、高橋彩は一瞬ためらったが、やはり一歩前に出た。

「高橋彩、警察に通報すると言ったのは君か?」

金田浩二は高橋彩を見つめ、どこか困ったような表情を浮かべた。

金田浩二は、高橋彩には後ろ盾の強い彼氏がいることを知っていた。彼女はその彼氏を盾に社内で好き放題しており、彼女に口出しできる者はほとんどいなかった。

金田浩二もとっくに彼女を疎ましく思っていたが、どうすることもできなかったのだ。

「金田専務、これは私のせいじゃありませんよ。さっきこの川本明に身分を証明しろと言っても、彼は証明しようとしませんでしたし、それにあの弓場風太郎は明らかに貧乏人です。普段は配達員で生...

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