第5章

レノン視点

 レコーディングスタジオはナッシュビル東部にある。古い倉庫を改装して、十数ものクリエイティブなスペースを詰め込んだ場所だ。ここに来るのは五年ぶりになる。当時はまだライブ活動をしていたし、フライヤーやSNSの投稿には自分の名前が載っていた。オーナーのマーカスは、スーツケースを抱えて入ってきた私を見て、目を見張った。

「レノン? 嘘だろ、本物か?」

「久しぶりね、マーカス」

「最後にお前を見たのは……」彼は言葉を濁し、頭の中で計算しているのだろう。「おいおい、いつ以来だよ。まだ音楽やってたのか?」

「今から再開するところ」

 彼はそれ以上何も聞かず、廊下の突き当たりにある...

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