第7章

山崎庄司視点

午前六時、俺は一人、森本亜里亜の住むタワーマンションの下に立っていた。警視庁の捜査官たちが最終準備を進めるのを、ただ黙って見つめていた。

夜明け前の空に、赤と青のパトライトが無機質に点滅し、静謐な高級住宅街に異様な緊張感を走らせる。俺は手にした書類——亜里亜の罪を証明する「証拠」——を強く握りしめた。形容しがたい複雑な感情が、胸の内で渦巻いていた。

絵美は昨夜、まだ体調が戻らないから家で休んでいると言った。一週間前の流産は彼女の心身を完全に蝕み、その顔は今もなお、蝋人形のように青白い。失われた俺たちの子供のこと、そして亜里亜が彼女を無慈悲に傷つけたことを思うと、腹の...

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