第51章 一晩帰らず

 二十数年を生きてきて、佐藤愛はこれほどまでに美しい男を、見たことがなかった。

 息を呑むほど整った顔立ち。彼女はまん丸に見開いた瞳で藤原青樹をじっと見つめ、まるで憧れのスターにでも出会ったかのように頬を上気させている。

 ついさっきまで心焦がれていた南山六也の存在など、一瞬で頭の中から綺麗さっぱり消え去っていた。

 愛は床にへたり込んだまま、わざとらしく媚びるような仕草で手を伸ばす。

「痛ぁい……あなた、助けてくださらない?」

 青樹の眉間に、あからさまな嫌悪の色が浮かんだ。彼は一瞥もくれず、その場を通り過ぎようとする。

 愛は焦った。必死に立ち上がろうとするが、強かに打ち付け...

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