第117章 元夫と求婚者の修羅場

謝部綾人は、あまりにも人目を惹く存在だった。

特にその全身から滲み出る病弱な雰囲気は、他人に警戒心を抱かせにくい。

どう見ても長生きしそうには見えなかったからだ。

「御影お嬢さん、奇遇ですね。あなたも病院に? どこかお悪いのですか?」

男の低く清冽な声には、どことなく気遣う色が滲んでいた。

眉目は清らかで秀麗。

一対の涼やかな切れ長の瞳にまっすぐ見つめられれば、常人ならば顔を赤らめ、心臓を高鳴らせていたことだろう。

考えてもみてほしい。これほどの美男子に見つめられて、恥ずかしがらないでいられるだろうか?

御影星奈は常人ではなかった。

彼女は端正な容姿にほとんど影響されない。...

ログインして続きを読む